ハグロトンボ(羽黒蜻蛉)、はカワトンボ科のトンボの一種。河原などでよく見かけることから、他のカワトンボ科のトンボと混同して「カワトンボ」「カワラトンボ」などと呼ぶこともある。
和名の「ハグロトンボ」は翅が黒いことに由来すると思われがちであるが、実際には婦人が歯を黒く染めた「お歯黒」に似た翅の色から「オハグロトンボ」と呼ぼれていたことに由来する。また、歯を黒くすることを「鉄奬つけ(かねつけ)」といったので「カネツケトンボ」と呼ぶこともある。他にゴクラクトンボ、ホトケトンボ、カミサマトンボなどの呼び方がある。
体長は60mm前後(腹長 オス:42~52mm、メス:40~48mm。後翅長 オス:35~42mm、メス:36~44mm)ほどで、トンボとしてはやや大型。翅が黒いのが特徴で、雌雄とも翅に縁紋をもたない。体色はオスが全体に黒く、腹部背面が金属緑色であるのに対し、メスは黒褐色となる。よく似た種類で、同じように翅が黒いアオハダトンボがいる。
羽化後しばらくは暗い林を飛び回るが、成熟すると配偶者を求めてなのか水辺に降りてくる。他のトンボのように素早く飛翔したりホバリングしたりせず、ゆっくり優雅に飛ぶ姿は胴体や翅の美しさを誇示しているかのようでもあり、羽ばたく際にパタタタ……と翅が小さな音を立てる。
幼虫は体長22~26mmほどの淡褐色から淡緑褐色をした、成虫同様に細いヤゴである。
トンボは日本では特に霊的昆虫とされることが多い。
日本のことを秋津島(あきつしま)と呼ぶが、神武天皇が国土を一望して、蜻蛉(あきつ)が交尾しているように、山々が連なり囲んでいる国だ。と、日本の国を秋津島(あきつしま)と名付けられたと言う。
トンボのことを「勝虫」「勝軍虫」と呼ぶが、「古事記」の雄略天皇の条に、腕にアブが止まったのを、ハグロトンボがたちどころに捉えて食ったらしく、それを機に戦勝を遂げたことからハグロトンボは「勝つ虫」ともされた。また、トンボは前にしか進まず、後退しないので縁起が良いとされ、馬の鞍や鐙、矢を入れる箙(えびら)や兜の前立などに使われた。
また、盆の季節に家の中に飛び込んでくるトンボなどは精霊(しょうりょう)様だから捕らえてはならない。
制作に関しては、かなり華奢な昆虫なので、細さの限界に挑戦した感じはある。翅は、透明感のある黒色なので、どう表現するか非常に迷ったが、硫化を丁寧にグラデーションにかけることにより、かなり近い感じで表現できたと思う。また、平常時に翅を畳んでいるようにするギミックに苦労した。